東北大学多元物質科学研究所 量子ビーム計測研究分野
東北大学多元物質科学研究所 教授
1985年3月 | 東京大学工学部物理工学科卒業 |
1987年3月 | 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻修士課程修了 |
1987年4月 | 株式会社日立製作所入社(基礎研究所配属) |
1996年12月 | 工学博士(東京大学) |
1997年3月〜1998年2月 | 欧州シンクロトロン放射光研究機構客員研究員 |
1999年11月 | 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻助教授 |
2003年3月 | 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻准教授 |
2012年4月 | 東北大学多元物質研究所教授(現職) |
短波長電磁波であるX線は、基礎研究や応用を問わず広く利用され、もはや不可欠なプローブといえる。最先端X線源であるシンクロトロン放射(SR)光源の登場は、X線関連技術の発展をますます加速させている。実験室系のX線源と比べて10桁ほどの輝度向上が実現しており、その他にも、波長選択性、干渉性、偏光、パルス性など、実験室では実現しにくい魅力的な性質が備わっている。本研究室では、このSR利用技術におけるフロンティア開拓を志し、特にX線の位相をキーワードとして研究を推進している。
X線も光であるので、位相という物理量を有する。果たしてこの位相はX線画像計測に活用されているであろうか?馴染み深い胸部レントゲン写真では、比較的X線を強く吸収する骨が良く映るが、臓器などの軟部組織は一般的にあまりよく見えない。すなわち、X線は軽元素からなる弱吸収物体を苦手にしている。しかし、X線の位相を検出すれば、従来法より約千倍の感度改善が可能となるので(文献1)、軟部組織であっても観察可能となってくる。
我々はX線干渉計を用いたX線位相計測に基づく位相イメージングを世界に先駆けて実現してきた(文献2, 3)。X線断層撮像法(X線CT)との組み合わせにより、三次元観察も可能となっている(図参照)。癌や血管などの構造を無造影で描出できることを実証し、科学技術振興調整費総合研究「X線位相情報による画像形成とその医療応用の研究」(H9-H14)を行った。
また、]線位相イメージング技術を実用化し、社会に還元するための開発も行っている。SR光源は優れた]線源であるが、巨大な施設であることは実用の観点からは問題となる。この場合はコンパクトな]線源を用いて位相イメージングを実現する必要があると言える。]線回折格子を用いる]線タルボ干渉計による位相イメージング(文献4)がそれを可能とする技術として期待されており、現在、科学技術振興機構、先端計測分析技術・機器開発事業「]線位相情報による高感度医用撮像技術の開発」(H16-H19)を推進している。
Figure: X線位相CTによるラット腎臓組織の観察例
[文献]
1) A. Momose and J. Fukuda, Med. Phys. 22 (1995) 375.
2) A. Momose et al., Nature Medicine 2 (1996) 473.
3) A. Momose et al., Radiology 217 (2000) 593.
4) A. Momose et al., Jpn. J. Appl. Phys. 42 (2003) L866.
所属学会:日本放射光学会、日本物理学会、日本応用物理学会、日本医学物理学会、高分子学会、The International Society of Optical Engineering
本研究室では、シンクロトロン放射光やX線自由電子レーザーなどの先端的]線源を活用し、先端研究と応用研究の両面で研究教育を行うことをモットーとする。特に「X線の位相を観る目」を技術の柱とし、X線光学における研究拠点確立を推し進める。
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