主な研究テーマ

X線結晶干渉計による三次元イメージング

図1に示すBonse-Hart型X線干渉計はシリコンなどのほぼ完全な結晶で作られる、 硬X線領域では歴史のある干渉計です。 結晶格子によるブラッグ回折を利用してX線が分割・結合され、マッハ-ツェンダー型の光学系が構成されます。 X線を干渉させるためには光路長差がX線の波長(約0.1nm)より小さいスケールで安定している必要があります。この干渉計は一個の結晶から全体を削りだすことで、高い安定性が実現されています。この干渉計を用いて生体軟組織やソフトマターなどの弱吸収物体の高感度観察を行うことができます(図2)。 X線結晶干渉計では、通常シンクロトロン放射光源とよばれる極めて明るいX線源の利用が不可欠です。また大面積での撮影が一般には困難です。一方で、X線結晶干渉計は二光束干渉であるために試料による位相シフトが直接測定できます。そのため現在知られている他の方法では実現できない高い感度のX線位相コントラスト撮像を行うことが可能です。これまで、神戸大学や筑波大学の医師と共同で、医学応用に向けた研究を進められてきました(図3はその一例)。

図1 シリコン単結晶でできているBonse-Hart型X線干渉計('LLL'と呼ばれるタイプ)。結晶格子によるブラッグ回折によってX線(黄色線)が分割・結合されます。 高分解能化のための工夫として、右端の結晶板は厚さわずか40ミクロンで製作してあります。

図2 Bonse-Hart型X線干渉計を用いて得られたウサギ肝臓組織(左)とラット腎臓組織(右)の位相CT像。

図3 高コレステロール食負荷により脂質沈着領域の増加した動脈硬化モデル。マウス(ApoE-KOマウス)の動脈硬化病変(スケールバーは1mm)。


※Reproduced figure with permission from M. Shinohara et al., Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 294 (2008) 1094. Copyright 2008 by the American Physiological Society.